パリの一流レストランで自分の音楽が流れた日
ミュージシャンを志した日から、街で自分の音楽が流れるということを、どこか漠然と夢見てきました。
自分が作った音楽が、自分の手を離れて、どこかの街の風景の中に自然に溶け込んでいる。
そんな場面に出会えたら、ミュージシャンとしてどれほど嬉しいだろう。そんなことを、ずっと心のどこかで思っていました。
そして先日のパリ滞在中、唐突にその夢が叶ったことを実感するような出来事がありました。
パリのNew Morningでの公演を終えて、数日間パリに滞在していた時のことです。
せっかくパリに来たのだから、美味しいレストランで食事をしたい。
そんな思いを叶えるために、滞在していたパリの9区にあるAspicというレストランを予約して行きました。
Aspicはミシュランにも掲載されるような一流レストランで、海外のこういう場所で食事をするのは初めての経験でした。
心を躍らせながらお店に向かいました。

実際の料理は本当に素晴らしかったです。
そもそもフランスに行ってから、どこで何を食べても本当に美味しくて、そのこと自体にかなり驚いていました。
ただAspicで出てきた料理は、そうしたフランスで感じていた全体的な美味しさを、さらに洗練させたようなものでした。
非の打ち所がない、という表現が近いかもしれません。
そして今回は、初めてワインのペアリングも試してみました。
「この料理はワインが主役です」
「ワインを引き立てるための食事です」
そういった言葉自体は、よくいろんなところで聞いたことがあります。
でも実際に体験してみると、その意味が少しだけ分かった気がしました。
例えばコースの中盤で、かなりスパイシーな赤ワインが出てきました。
そしてその赤ワインに合わせられていたのは、なんとパスタでした。
そのパスタは、コース全体の中で見ると、ものすごく派手な料理というわけではありませんでした。
もちろん美味しいのですが、単体で強烈なインパクトを残すというよりは、少し控えめで、ある意味では普通にも感じられる料理でした。
でも後の料理に進んでいく中で気づいたんです。
あのパスタは、ワインを引き立てるための料理だったのだと。
その瞬間、すごく音楽にも通じるものがあるなと思いました。
ライブでも、必ずしもずっと自分がギターソロを弾いていればいいわけではありません。
時にはキーボードが主役になる曲があってもいいし、トランペットが前に出る瞬間があってもいい。
誰かが一歩引くことで、誰かが前に出られる。
一流の料理というのは、音楽と共通するポイントがたくさんある!
そんな話を、Nahoさんとしながら食事をしていました。
美味しいし、学びもある。
これはすごい体験だね、と話していたその時です。
ふと、聞き覚えのあるギターが耳に入ってきました。
まさかなと思って耳を澄ませると、なんとそれは自分の曲でした。
僕たちの「Kyoto」という曲が、店内に流れていたのです。
本当に驚きました。
そして、それ以上に本当に嬉しかったです。
ちょうど料理と音楽の共通点について話していた矢先の出来事だったので、まるでその会話に対する答えが返ってきたような、不思議な感覚がありました。
思わずシェフに、
「これ、僕たちの音楽です」
と伝えました。
するとそこからは、シェフがずっと僕たちの音楽を流してくれました。
自分の音楽が街で流れるということは、ミュージシャンをやっていて最大の喜びの一つだと思います。
ただ、実際に自分自身がその場に立ち会えることは、ほとんどありません。
自分の知らないところで誰かが聴いてくれている。
YouTubeやSpotifyのアナリティクス画面では数字でそのことを理解できます。それだけでも十分に嬉しいことです。
でも、自分がその場にいて、しかもパリで、さらに一流のレストランで、自分の曲が自然に流れているのを聴く。
これは初めての経験でした。
パリという街は、実際に足を運ぶまでは、とても遠い街のように思えていました。
もちろん物理的な距離もあります。
でもそれ以上に、文化的な憧れが強すぎて、自分とは少しかけ離れた場所のように感じていました。
音楽、ファッション、アート、料理。
あまりにも多くのものが積み重なっている街だからこそ、どこか自分とは関係のない場所のように思っていたのかもしれません。
滞在している間も、なんとなくそんな気持ちは残っていました。
でも、その街に自分たちの音楽が流れた瞬間、そこはもう自分たちの街なのかもしれない。
そんな話を、美味しいご飯を食べた帰り道にNahoさんとしていました。
夜10時を過ぎてもまだ明るい、パリの帰り道。
あの景色は、一生忘れることはないと思います。
そしてここからは、SGL限定で少しだけ踏み込んだ話をしたいと思います。
肝心のパリ公演はどうだったのか。

